健康ポイント事業でウォーキングアプリを活用
―まずはaruku&(あるくと)導入の背景についてお聞かせください。
富士吉田市では、平成26年より健康ポイントラリーという施策を実施していました。健康診断を受けるなど健康に関する行動をとるとハンコをもらうことができ、ハンコを集めて市役所に申請に来ていただくとクオカードと交換できるという取り組みです。対面の施策で、申請のために市役所にも来ていただく必要があったことから参加者層が限定されていました。
そんな中でコロナ禍に突入して外出が難しくなりどうしようかと考えていると、2021年度より山梨全県でウォーキングアプリを活用した施策が始まりました。システムは素晴らしいものでしたが、対象者が国民健康保険の被保険者に限られていました。国保の被保険者は富士吉田市民の20%ほどで、対象者が多くないんです。力を入れたい気持ちはありましたが歯がゆかったです。
こうした事情で、賞品交換や参加者層の面で解決でき、全市民が参加できる富士吉田市単独の施策を検討することにしました。また住民はこうしたイベントに参加することへの気恥ずかしさもありますので、実名ではなく匿名で参加できるものがいいという想いもありました。
山梨県の取り組みを参考にウォーキングアプリによる施策にしようと何社かに問い合わせて見積もりをとることにしました。aruku&はその中の1社で、問合せへの返信がとても早かったですね。話を進めていくうちに費用面や内容面でも魅力を感じ、決定しました。当初から、健康ポイントラリーの施策を踏襲し、年間を通した健康ポイント事業として実施したいと考えていましたので、インセンティブをつける仕組みがあることはもちろん、住民キャラクターがいるaruku&ならではの楽しみもいいと思いました。市長からも『面白い、やるべきだ』と言ってもらえました。
導入までの検討期間は、10か月ほど
―導入までの検討期間はどれぐらいでしたか?
検討から導入開始まで10か月ほどでした。ちょうど令和4年度の予算を確保する時期の2021年10月頃に検討を開始し、翌2022年の7月に施策を開始しました。お伝えした通りaruku&は返信が早く、問合せから1か月以内に見積もりの話やオンラインでの打ち合わせができて助かりました。
―『ふじよしだWalking+』の運営上での役割はどのようにされていますか?
国民健康保険を担当し医療費削減を目指す市民課と、市民全体の健康増進を推進する健康長寿課の2課で連携して実施しています。課をまたがる施策は組織の構造上ハードルがあるものですが、イベントの企画や実行は市民課で行い、予算措置を健康長寿課でとるなどして、課を超えた協力的な体制で進めることができています。
健康診断の受診率を上げるためにインセンティブを用意
―歩数に応じたインセンティブだけでなく、健康診断の受診もインセンティブにされています。どのような課題感があって設計されたのでしょうか?
山梨県が先行して取り組んでいたので参考にしました。健康診断のインセンティブに関しては、やはり健診の受診率を上げるという課題があるからです。受診率は、山梨県では50%程度ですが富士吉田市は40%未満で、県内の市町村27のうち24位だったんです。施策に取り入れるようになり、ようやく40%を超えました。今では健診を受けた方に対して、こちらから『aruku&を登録しませんか』と提案するようにしています。
参加者層は10代から高齢者まで幅広い
―施策を開始した2022年7月と、一周年記念イベントが終了した2023年10月では、『ふじよしだWalking+』の登録者数は約4倍になりました。実際の手応えや評価、また参加者層はいかがでしょうか?
実際の参加者層は50、60代が多いです。市の中でも人口が多い年齢層なので自然な結果かと思いますが、それ以外にも学生の方や70~80代の高齢者の方にも参加いただいています。想像よりも幅広い年齢層の方に参加いただいていて、意外な結果でした。学生の方から「500円に交換できるので嬉しいです」という声をいただいたこともあります。
確かに登録者数は増えましたが、周知が行き届けばもっと増えると思っています。チラシなどを活用して周知を頑張っていますが、まだ知らない市民もたくさんいます。今後も周知に力を入れていき、特に40代以下の若年層で運動機会のない方に使っていただきたいです。またaruku&自体の楽しさや使い方を知らない方も多いので、aruku&の理解促進にも取り組んでいきたいですね。事業参加者とのオフ会もやってみたいですね。
―周知のお話がありましたが、告知は具体的にどのように実施されていますか?
折り込みチラシや広報誌の掲載、ポスターの掲示、健康診断結果へのチラシの折り込み、それから、市のホームページやSNSを通して発信しています。あとはCATVに取組を取り上げてもらったりもしています。aruku&の中の『団体お知らせ』の機能も活用していますが、そこから知る方も多かったです。告知をしたら一気に100名ほど増えました。既に定常施策に参加している方は団体お知らせが効きます。
1周年記念イベントの目標、見込み通り!
―1周年記念イベントでは目標は設定されましたか?
今回、市内の観光スポットである「鐘山の滝」「明見湖」にQRコードを設置し、参加者には歩いて現地まで赴いていただく企画を実施しました。前回も同様の施策を実行したんですが、前回比2倍ほどのご参加をいただけたので、概ね見込み通り増やすことができたと思います。
もう1つ、オリジナルのサコッシュを賞品にした企画については、抽選にはしていますが、実は参加いただいた方全員に届けばと考えて設計しました。いつもは電子マネーギフトを賞品にしていますので、現物の賞品を渡したかったんです。結果、用意した数よりもたくさんの方に応募いただけ、全員にとはいきませんでしたが多くの方にお届けすることができました。やってみてよかったです。
観光スポットへ誘致し市の魅力を再発見してもらうねらい
―QRコードを市内の観光スポットに設置する企画、面白くてワクワクするアイデアだと思いました。
富士吉田市はどこに行くにも車で行けてしまうようなコンパクトシティで、車を使う人が多く、歩いている人がいると少し目立つほどです。健康のためには歩いて欲しいので、歩いて行かないと辿り着けないところにQRコードを設置したいと思いました。
前回は新倉山浅間公園の忠霊塔に設置しましたが、設置できる場所は限られるので、今回はどこに設置しようかと検討していました。すると、ちょうど鐘山の滝を担当している富士山課が、「鐘山の滝は少し前にリニューアルしたがあまり知られていない」と言っていたので、富士吉田の魅力を再発見してもらえる機会だと考え、鐘山の滝に決めました。QRコードは隠したかったわけではないですが、宝探しのように楽しんで欲しいと考えました。定常施策では毎月15万歩を達成すると健康カードがもらえる、という内容ですが、この企画はおまけのようなもので、現地でQRコードを読み取るだけで健康カードが1枚もらえます。楽しんで参加いただきながら電子マネーギフトに交換するという体験をしてほしいと思いました。でも、見つからなかった、という方もいました。現地からお電話でもいただけたらお伝えできましたが、帰宅してから『なかったよ』となった人もいて、もう少し工夫が必要だったかもしれません。
―1周年記念イベントを実行する上で大変だったこと、苦労されたことを教えてください。
事前準備が大変でした。企画の内容検討は当然ですが、QRコードの企画は設置場所を検討したり許可を取りにいったり、また配布するチラシのデザインや印刷のスケジュールを考えながら進めたり。イベントが始まればほとんど手が離れますが、事前準備は駆け足でした。
管理画面の使い勝手「とても便利」
―aruku&の管理画面について、満足度やご意見・ご感想をお聞かせください。
管理画面は、簡単な集計ができCSVでダウンロードができるなど、とても便利です。山梨県で導入しているアプリでも市民へのお知らせはできましたが、内部で申請が必要など少し煩雑でした。でもaruku&は管理画面で文章を入力するだけで告知ができますし、時間指定やPUSH配信もできて便利です。今後、性別や市の施策に合わせた集計機能やアンケート機能が備わるとなお嬉しいです。
サポート体制はきめ細やかでスピーディ
―aruku&のサポート体制等についてご意見・ご感想をお聞かせください。
問い合せだけではなく相談ごとなど細かく連絡していますが、すぐに返事をもらえるので助かっています。1周年記念イベントの時にも相談しました。従来はデジタルギフトに交換するには1か月ほどが必要でしたが、1周年記念イベントではすぐに交換できる仕組みがいいなと相談しまして、すぐに要望を聞いていただき、即時交換ができるようになりました。従来と比較して応募数が約2倍になったので、効果があったと感じています。また、告知用のチラシを作成いただけるのもありがたいです。チラシは、自分たちで作るとあまりかっこいいものができないので、デザインまで作成いただいて評価が高いです。今後もきめ細やかに対応いただけたらと思っています。
―今後の施策やイベント予定、またaruku&で実施してみたいことがありましたらお聞かせください。
昨年に実施した『大抽選会』(1年間の総歩数で特典をご用意するダブルチャンスの企画)は今年も実施する予定です。今年(2023年度)は地元スーパー「セルバ」の敷地内で開催予定です。出店も出そうと計画していますよ。実は今回のイベント参加者の中でも、大抽選会を知らない方がたくさんいたので、しっかり周知をしていきたいです。
また、不定期開催のイベントも、随時秋から冬にかけてやっていきたいですね。それから、先日は協賛企業から賞品を提供いただく仕組みについて紹介いただき魅力を感じましたので、この取り組みもやってみようと思っています。協賛企業から賞品を提供いただけるのはとてもいい案ですね。地元企業でも活用ができるとアピールになります。