ウォーキングの取り組みを企業で実施するには?
メリットや事例を解説

近年、従業員の健康に配慮する企業が増えており、健康を増進する施策としてウォーキングの取り組みを実施しているところも少なくありません。数ある健康のための取り組みの中でウォーキングにはどのようなメリットがあり、従業員に取り組んでもらうためにはどんな工夫をすれば良いのでしょうか。
本記事では、ウォーキングの取り組みを行う企業が増えている背景や、ウォーキングを実施するメリット、実際の取り組み事例などを解説します。

目次

従業員の健康に配慮する企業が増えている背景とは

本章ではまず、従業員の健康に配慮する企業が増えている背景について解説します。

健康経営の重要性の広がり

健康経営とは、従業員の健康の維持・増進を経営上の重要な課題として捉え、企業が戦略的・積極的に従業員の健康づくりに取り組むことです。従業員の健康状態を良好なものにすることで、生産性の向上や競争力の強化、ブランドイメージのアップ、そして新たな価値の創出につなげることを目的としています。

健康経営はもともと、アメリカの経営心理学者であるロバート・ローゼン博士が1992年に、「The Healthy Company」という著書の中で提唱したのが始まりとされています。

かつては、「健康管理は個人の責任であり、企業が介入する事柄ではない」という考え方が一般的でしたが、公的医療保険制度がないアメリカでは従業員の健康状態が悪化することで企業の医療費負担が増加し、経営を圧迫する事態に見舞われていました。こうした問題意識から、従業員の健康づくりにかかる費用は必要な投資であると認識されるようになり、健康経営の考え方が広がっていったのです。

ローゼン博士の著書をきっかけに、アメリカでは1990年代から健康経営の考え方が広がりましたが、近年では日本でも健康経営の重要性が認識されるようになり、従業員の健康に配慮する企業が増えています。

健康問題の増加

従業員が自身の健康に問題を抱えると、病気による欠勤や休職が発生しやすくなるほか、出勤していても体調がすぐれないために業務に集中できず、生産性が低下する問題が発生します。生産性が低下すれば企業の業績や売上にも影響が及び、経営状態が悪化する可能性があります。

一人当たりの生産性低下による影響は小さくても、多くの従業員が健康に問題を抱えていると、その影響は非常に大きなものとなります。

従業員の健康に関して、近年問題となっているのがテレワークの増加に伴う運動不足です。コロナ禍以降、テレワークを導入する企業が増えましたが、テレワークの割合が増えると家の外に出る機会が減り、運動不足になることで肥満をはじめとするさまざまな健康問題が生じる可能性が高まります。

テレワークの割合の増加は運動不足だけでなく、精神面で悪影響を及ぼす可能性もあります。厚生労働省が公表している資料(※)によると、テレワーク環境では以下のようなメンタルヘルス上の問題が生じやすくなるとされています。

  • 同僚や上司とのコミュニケーションが減り、悩みを抱え込んだり、コミュニケーション不足による孤独感・孤立感を感じたりする。
  • 特に職場の人間関係が十分に構築できていない、業務を十分理解できていない新入社員や異動のあった者は、不安やストレスを感じる。
  • ICT(情報通信技術)に苦手意識のある労働者が、テレワーク自体にストレスを感じる。
  • 「業務時間外にメールや電話等への対応を要求された」、「就業時間中に上司から過度な監視を受けた」等のハラスメントもある。
  • 通勤がなく、いつまでも業務を行うことが出来るため、仕事とプライベートの区別があいまいになってしまう。
※ 出典:厚生労働省「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き

優秀な従業員の確保と定着

人材不足が深刻化している昨今、優秀な従業員の確保と定着は多くの企業にとって重要な課題です。人手不足のために働き手の側が職場を選びやすくなる「売り手市場」において、従業員の健康を損ねるような劣悪な労働環境では人材を確保することは非常に困難です。

そこで、健康づくりのための施策を実施し、働きやすい環境を整えることで、優秀な人材を惹きつける必要性が高まっています。従業員の健康面に配慮することで、心身の不調を訴える従業員が減り、離職率の低下が期待されます。

また、健康施策を実施していることで「従業員の健康に配慮する企業」という社会的イメージが強まり、企業ブランドが向上する効果も期待できます。ブランドイメージが向上することで、顧客や投資家からの信頼を得ることができ、自社への信頼度や株価、資金調達の面で競合に比べ有利になる可能性もあります。

企業でウォーキングの取り組みが増えている背景とは

従業員の健康を増進する施策にはさまざまな種類がありますが、その中でも以下の背景からウォーキングの取り組みが増えています。

簡単にはじめられる取り組みであるため

従業員に運動する習慣をつけさせようとして、例えばトレーニングジムのような設備を導入しようとすると莫大な費用がかかります。

しかし、ウォーキングは特別な器具や場所を必要とせず、ほぼどこでも行える運動であることから設備投資が不要であり、企業にとっては導入コストが低いメリットがあります。また運動が得意でない従業員でも手軽に始められるため、普及しやすいことも大きな利点です。

ウォーキングは体力レベルに関係なく誰でも取り組むことができるため、運動習慣のない従業員でも参加しやすく、長続きしやすい取り組みといえます。

組織で導入しやすいため

ウォーキングは実施する際に特別な道具や場所を必要としないため、オフィス勤務でも在宅勤務でも気軽に参加できます。一人で黙々と歩く場合もあれば、チーム戦形式にして部署やオフィス単位などの団体で参加を促すこともできるなど、多様な方式で行えることも導入がしやすい理由の1つです。さらに、全国に拠点がある場合でも全社的な取り組みとして実施できます。

このように、組織全体で導入しやすいこともウォーキングが普及している背景の1つです。

ウォーキング実施で期待できるメリットとは

企業でウォーキングを実施することのメリットはさまざまなものがあります。従業員のパフォーマンスの向上だけでなく、コミュニケーションの促進といったメリットもあるため、一体感や連帯感の醸成といった部分にまで影響を及ぼすことが期待できます。

従業員のパフォーマンスの向上

健康経営の一環としてウォーキングを取り入れることで、心身両面での健康増進が図られ、従業員の業務パフォーマンスが向上することが1つ目のメリットです。

健康状態が良好になれば、従業員の集中力や作業効率が向上し、同じ時間でより多くの成果を上げることが可能になります。また、健康上の問題を抱えながら出勤している状態(プレゼンティズム)が改善され、従業員が本来の能力を発揮しやすくなります。

特に、在宅勤務でデスクワーク中心の従業員は座りっぱなしになることが多く、運動不足になりがちです。座りっぱなしの場合、エネルギー消費量が減って肥満になりやすくなったり、腰痛を発症しやすくなったり、さらに血流が悪くなったりと多くの疾病リスクにつながるため、ウォーキングを通じて足腰を動かすことが非常に重要になります。

ウォーキングは精神面を良好な状態に保つ効果もあります。適度な運動はセロトニンやエンドルフィンといった脳内物質の分泌を促し、気分を改善する働きがあるためです。

セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、心身をリラックスさせる効果があります。また、エンドルフィンはストレスや痛みなどの不快な感覚を抑える効果を持つ脳内ホルモンです。

こうした脳内ホルモンが分泌されることで、従業員のストレスが軽減され、仕事に対する意欲やモチベーションを維持しやすくなります。

心身ともに健康な状態になると創造性が高まり、新しいアイデアやイノベーションが生み出される可能性が高まるほか、年齢を重ねても高いパフォーマンスを発揮し続けることが可能になります。

社内コミュニケーションの促進

ウォーキングは、部署を超えた交流の場となるメリットもあります。異なる部門の従業員が一緒に歩くことで、普段あまり接する機会のない同僚同士のコミュニケーションが活発になり、相互理解が深まりチームワークが強化されます。

また、部署やオフィスごとに競う形式にすることで、同じチームとして共通の目標に向かって取り組むことによる一体感や連帯感が生まれます。

さらに、ウォーキングを取り入れることで健康を重視する職場環境が形成され、会社に対する従業員のエンゲージメントが向上します。従業員の健康に配慮する企業文化が醸成されることで、従業員の健康状態だけでなく働くモチベーションも高まり、結果として離職率の低下につながります。

従業員にウォーキングに取り組んでもらうには

ウォーキングの取り組みを成功させるためには、多くの従業員に参加してもらう必要があり、そのためには従業員が自主的に参加したくなるような環境を整えることが重要です。

その際、単に「ウォーキングをしましょう」と呼びかけるだけでは、個々人の判断に任せることになってしまい、結果として参加が思うように進まないことがよくあります。一方で、強制的に参加させても従業員のモチベーションは高まりません。

そのため、以下で解説するように工夫を凝らしたイベント形式でアプローチすることが有効です。

イベントを企画する

さまざまな形でウォーキングイベントを企画することで、従業員の参加を促すことができます。

例えば、期間を決めて「ウォーキングチャレンジ」を実施し、期間内の総歩数や1日の目標歩数の達成日数を競い合うイベントを企画したり、個人戦やチーム戦を設定したりすることが効果的です。その際、優勝者や上位入賞者に賞品や特典を用意することで参加意欲と、ウォーキングへのモチベーションが高まります。

また社内掲示板や社内報、専用アプリなどを活用して途中経過を発表することで、お互いに競い合う意識が生まれ、より積極的に参加してくれるようになります。

参加意欲を高めるインセンティブをつける

ウォーキングの取り組みに対する意欲を高めたりモチベーションを維持したりする目的で、「一日平均3,000歩」のような一定の目標を達成した従業員には景品・商品などの報奨(インセンティブ)を与える制度を設けることも効果的です。

インセンティブを設定することで積極的な参加を促すことができるほか、他の参加者やチームとの競争意識が生まれ、より多くの一日平均歩数を達成したり、イベント期間中に毎日歩く意識が生まれたりと、健康増進効果が一層高まることが期待できます。

ウォーキングイベントの取り組み事例

本章では、ウォーキングイベントを実際に行い、成果を挙げた企業の事例を2つご紹介します。

大樹生命保険株式会社様|ウォーキングイベントに全国の全部署が参加して大成功!

2019年に三井生命保険から社名を変更し誕生した大樹生命保険株式会社様では、健康経営推進グループの発足を機に、全社員で取り組める健康増進施策を模索する中でウォーキングイベントに注目し、イベントを成功に導きました。

健康経営を推進するにあたって、同社では各部署から2名ずつ健康推進委員を選出し、さまざまな施策を浸透させる体制づくりを進めていきました。また、行動規範に健康経営についての項目を追加し、これを反映したクレドを配布して従業員の意識づけを行いました。

同社の取り組みで特徴的なのは、ウォーキングイベントを実施する前に、部署ごとにウォーキングイベントのアプリの利用登録率を競うイベントを実施した点です。健康推進委員が従業員に登録を促し、さらに社内報で部署ごとの登録率ランキングを示した中間報告を発表した効果もあり、全国の部署の従業員に多数参加してもらうことができました。

イベントの実施後には「いつもよりちょっと遠回りしました」「一駅多く歩きました」といった声が集まり、会長や専務など上層部からの良い反応もありました。各社員や所属ごとに歩数がランキングになることでモチベーションがあがり、従業員の健康への意識が高まったことを実感できたとのことです。

株式会社日本トリム様|健康意識もコミュニケーションの活性化も同時に実感

ウォーターヘルスケア事業を中心として、グローバルなメディカルカンパニーを目指す日本トリム様は、家庭用医療機器を取り扱うため、もともと健康意識の高い企業でした。

しかし、2018年に実施した社内調査の結果、運動習慣のある社員が約3割程度しかいないことが判明。これを改善するため、ウォーキングアプリを導入しウォーキングイベントを実施することにしました。

同社では連続的にイベントを開催することで歩く意識を定着させ、継続させることが大事だと考え、1年に6回ほど実施しています。実際にイベントは歩くモチベーションになっており、イベント期間中とそうでない期間では、平均歩数の差が3,000歩ほどもあるとのことです。

従業員からは、「ウォーキングイベントを始めてから運動習慣がつきました」「知らなかった道を見つけるのが楽しい」などポジティブな反応が多く寄せられました。チーム戦も実施しているため、違う部署の社員の間で「週末はどこを歩いたの?」「何歩歩いたの?」といった会話が生まれ、コミュニケーションの活性化にもつながっています。

また、「1日平均8,000歩」をクリアした従業員全員にプレゼントを用意したところ、従業員のモチベーションが上がり、1日平均8,000歩の達成率が大きくアップしました。

ウォーキングイベントの実施に最適なアプリとは

「ウォーキングイベント」は比較的参加しやすいイベントであるため、運動が苦手な人や体力に自信のない人などを含め、多くの人に参加を促すことが可能です。イベントに多くの従業員が参加してくれることで、参加者の間で「共通の話題」ができ、コミュニケーションの活性化にも貢献します。

前章でご紹介した事例のように、ウォーキングイベントを成功に導くためには、ウォーキングイベントの実施をサポートするアプリを導入することが効果的です。

aruku&(あるくと)は、低コストで導入可能な企業向けウォーキングイベントサービスアプリであり、従業員が自身のスマホにアプリをダウンロードするだけで導入が可能です。健康経営優良法人の認定基準施策として、健康経営を目指す多くの企業様にご活用いただいています。これまで200社以上のウォーキングイベントを支援してきた経験から、参加者を増やすためのノウハウをご提供いたします。

効果測定やデータの集計機能などを備えた管理者向けの管理ツールも充実しており、参加者の積極性を高めるための企画を実施する事ができます。

aruku&(あるくと)の詳細につきましては、下記のサービス資料をご覧ください。

企業・健保の健康経営や自治体の健康増進活動にはaruku&!
お問い合わせやご相談はお気軽にご連絡ください。

サービス資料やお役立ち資料を
ご希望の方はこちら

インストールして遊んでみてね!
App Storeからダウンロード Google Playで手に入れよう
#
  1. トップ
  2. お役立ちコラム
  3. ウォーキングの取り組みを企業で実施するには?メリットや事例を解説