健康経営の指標は何をどのように定めるべき?
指標の例と策定の流れを解説

従業員の健康維持・増進を経営課題としてとらえる健康経営が注目されています。健康経営の施策は漠然と実施するのではなく、指標を設定し、その達成を目指して行うことが効果的です。しかし、健康経営の指標には何があり、どのように設定すれば良いかわからない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、健康経営の指標の具体例や設定方法、設定する際のポイントを解説します。

目次

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康管理を他の事業活動と同様に経営課題としてとらえ、その課題解決に向けた取り組みを行うことです。経済産業省は、「健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と定義しています。

健康経営が近年注目されるようになった背景として、テレワークの普及で外出する機会が減り、運動不足になる人が増えたことが挙げられます。運動不足が原因でメタボリックシンドロームや肥満になると従業員の健康が損なわれるほか、対面で人と会う機会が減ったことでメンタルヘルスに悪影響が及ぶケースも見られるようになってきました。

従業員の心身の健康が損なわれると企業の生産性が低下するため、健康経営は企業にとって非常に重要な取り組みです。

健康経営を通じて従業員の健康に配慮することで、働きやすい環境が整い、離職率の低下につながります。健康を第一に考えている企業というブランドイメージを作ることで、顧客や投資家からの信頼を高める効果も期待できます。

健康経営では指標の設定が重要

健康経営において指標を設定することのメリットは、以下の通りです。
・目標を具体化:
抽象的な「従業員の健康増進」という目標を、測定可能な具体的な目標に落とし込むことができます。
・進捗の可視化:
定期的に指標を測定することで、取り組みの進捗状況を客観的に把握できるようになります。
・効果の検証:
施策の実施前後で指標を比較することで、その効果を定量的に評価でき、改善につなげることができます。

健康経営において指標を設定することのメリット

良好な関係性を形成することは、チームビルディングにおいて基本となる目的です。チームメンバー同士が相互理解や信頼関係を築き、お互いの個性や価値観を尊重し合うことで、チームとしての一体感を高めることができます。

健康経営における指標の設定方法

では、健康経営における指標はどのように設定すれば良いのでしょうか。以下でその方法について解説します。

目的・目標を定める

はじめに、健康経営を実施する目的・目標を設定します。

目的としては、例えば「健康状態を改善することで離職率を低下させる」「従業員のエンゲージメントを高める」「(最終的に)企業の業績を高める」といったものがあります。

抽象的な「従業員の健康増進」という目的を、測定可能かつ具体的な目標に落とし込むことが大切です。

データを収集する

次に、従業員の健康状態や生活習慣などに関するデータを収集します。

具体的には、健康診断やストレスチェックの診断結果、時間外労働時間、離職・休職の状況などのデータです。こうしたデータを集めることで、現状の経営においてどの指標を優先的に改善すべきか、課題を把握できるようになります。

評価の方法としては、健康診断結果や従業員満足度アンケートを集計したり、フィードバックツールを活用したりする方法があります。健康データの一元管理ができる健康管理ツールの導入も有効です。

収集したデータはExcelやデータ解析ツールなどを用いて解析し、傾向や課題を把握します。

指標を設定する

目的・目標を定め、データを収集した後、いよいよ指標を設定します。代表的な指標には以下のものがあります。

<従業員の健康状態に関する指標>
定期的な健康診断の受診率:健康診断の受診率は、従業員の健康管理の意識を測るうえで重要な指標です。健康診断の受診率が低い企業では特に改善したい項目です。
生活習慣病の発症率:生活習慣病の発症率を把握することで、従業員の健康リスクを評価し、予防策を講じることが可能です。
保健指導対象率:健康診断の結果から保健指導が必要な従業員の割合を示す指標であり、従業員の健康をどの程度改善すべきか判断する際の材料となります。

<職場環境に関する指標>
従業員満足度:従業員の職場環境に対する満足度を測定することで、働きやすさや職場の改善点を把握できます。
ストレスチェックの結果:従業員のメンタルヘルスを評価し、職場環境の改善に役立てるための重要な指標です。ストレスレベルが高い従業員が多いと、休職・離職率が高まりやすくなります。

<生産性に関する指標>
プレゼンティズム:体調不良や病気、ストレスが原因で、出勤はしているものの本来の力を発揮できず、生産性が低下している状態を指します。これを測定することで、健康状態が生産性に与える影響を評価できます。
アブセンティズム:病気やメンタルヘルス上の問題で欠勤・休職している状態のことです。従業員の健康状態や職場環境の問題を示す指標として用いられます。仕事が全くできない状態のため、プレゼンティズム以上に生産性の低下をもたらします。

<労働実態に関する指標>
長時間労働者数:長時間労働者の数を把握することで、労働環境の改善が必要かどうかを判断できます。
平均労働時間:労働時間の平均を測定し、適正な労働時間管理が行われているかを評価します。
有給休暇取得率:ワークライフバランスがどの程度とれているかを示す指標として用いられます。

<健康施策への参加率・満足度(実施している場合)>
従業員が健康施策にどれだけ参加しているかを示す指標です。また、施策の満足度を測定することで、その効果や必要な改善点を評価できます。

実施目的や現状の課題に合わせ、最適な指標を設定することが重要です。

取り組みを設定する

設定した目的・目標や収集・分析したデータをもとに、自社にとって最適な取り組みを選定し、実施します。ここでは経済産業省の資料をもとに実際の取り組み事例をいくつかご紹介します。

<事例①> 社会福祉法人大洲育成園:利用者と一緒に健康経営を進めながら、地域にその情報を発信
障害者支援施設や障害福祉サービス事業を運営する社会福祉法人大洲育成園(愛媛県大洲市)では、運動機会の増進に向けた取り組みとして、平日は昼食後に、利用者と一緒に20分間の歩行運動を行っています。また、受動喫煙対策に関する取り組みとして敷地内を全面禁煙にしました。
こうした健康経営の取り組みを地域に発信するため、施設の入り口から良く見えるところに「健康経営優良法人」認定の看板等を掲げ、健康経営の「見せる化」を行っています。

<事例②> 株式会社笠間製本印刷:高い目標を掲げ、経営層が率先して健康経営の取り組みを推進
印刷業を営む株式会社笠間製本印刷(石川県白山市)では、残業時間削減のため年始に残業時間を含めて部署の業績目標を設定し、その目標と実際の結果を照らし合わせて、部署の管理者の賞与に反映させています。また、定刻になると管理職のパソコンを強制的にシャットダウンするシステムも本格導入。管理職が早く帰宅することで部下の社員の残業も少なくなりました。
運動機会の増進に向けた取り組みとしては、2019年10月に代表取締役の呼びかけで代表取締役をはじめ6名が金沢マラソンに参加し、全員が完走しました。さらにスポーツジムとの法人契約を結び、従業員に利用を呼び掛けています。

<事例③> ナガオ株式会社:セルフチェックシステムを導入し、健康リテラシー向上を推進!
化学工業薬品の製造販売を手掛けるナガオ株式会社では、健康の意識付けのため、システム上での問診や測定データ(血圧・体重等)をもとに10分程度で分析される結果と個別アドバイスにより、将来の健康状態の予想が自動出力されるセルフチェックシステムを導入しています。当初は希望制でしたが、社内への口コミで広がり、現在9割以上の方が2ヶ月に1度活用するようになりました。
また、運動機会の増進に向けた取り組みとして、部署の垣根を超えてマラソンの同好会を結成。会社として、大会参加費やユニフォーム作成費用を全額負担することでサポートしています。

出典:経済産業省「健康経営優良法人 取り組み事例集(令和2年3月)」

評価・改善を行う

健康経営の施策は実施して終わりではなく、実施後に評価・改善を行うことも必要です。

健康経営の取り組み状況と指標の変化を定期的にモニタリング・評価し、改善を重ねていきます。PDCAを回して課題を素早く発見し、必要に応じて計画や指標、実施内容の見直しを進めることが大切です。

健康経営の指標と取り組み策定のポイント

以下では、健康経営の指標と取り組み策定の際のポイントを解説します。

明確な目標を設定する

まずは、現状のストレスチェックや健康診断などのデータを分析し、具体的・定量的な数値目標を設定します。

従業員の満足度向上や職場環境の改善など数値化しにくい目標についても、アンケート調査やフィードバックツールを通じて可視化すると良いでしょう。あまりに高い目標は達成が難しくモチベーションが下がりやすいので、達成可能な水準で設定することがポイントです。

多面的な評価指標を選定する

健康経営の指標には従業員の健康状態、職場環境、生産性など数多くのものがありますが、これら複数の指標を多面的に評価することもポイントです。そうすることで、健康経営に必要な要素を網羅でき、より大きな効果を得ることが期待できます。

従業員の理解と参加を促進する

健康経営の目的や重要性、取り組み内容を従業員に分かりやすく説明し、理解を得ることも不可欠です。

なるべく多くの従業員に参加してもらう方が効果的であるため、従業員が主体的に参加したくなるような仕組みづくりを進めていきます。経営層が主導し、トップダウンで全社的にコミットする姿勢を示すことも重要です。

以上の点を踏まえ、指標を達成しやすく、かつ従業員が参加しやすい取り組みを選定することが重要です。従業員の参加のしやすさは、取り組みの成功に直結する重要なポイントとなります。

従業員に参加してもらいやすい施策とは

従業員に参加してもらいやすい健康経営の施策の一つとして、ウォーキングイベントがあります。ウォーキングイベントは、特別な道具やスキルを必要とせず誰でも参加しやすいだけでなく、継続しやすい点も特長です。

そのような特長から、ウォーキングイベントは「参加率」や「継続率」を指標として定めた際に特に効果を発揮します。

ウォーキングイベントを実施する際には、aruku&(あるくと) for オフィスを活用するのがおすすめです。

aruku&(あるくと) for オフィスは、低コストで導入可能な企業向けウォーキングイベントサービスアプリです。従業員が自身のスマホにアプリをダウンロードするだけで導入が可能です。

健康経営優良法人の認定基準施策として、健康経営を目指す多くの企業様にご活用いただいています。これまで200社以上のウォーキングイベントを支援してきた経験から、参加者を増やすためのノウハウをご提供いたします。

管理者向けの管理ツールも充実しており、効果測定やデータの集計機能など参加者の積極性を高めるための企画も実施可能です。

aruku&(あるくと) for オフィスの詳細につきましては、下記のサービス資料をご覧ください。

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