「低栄養」とは、健康的に生きるために必要な量の栄養素が足りていない状態です。特に、身体を動かすために必要なエネルギーや筋肉や皮膚、内臓などをつくるたんぱく質が不足した状態は「たんぱく質・エネルギー欠乏」と呼ばれています。高齢者は一般的に年齢に伴う体の機能の低下により、食事が食べにくくなり、食事の量が減ってあっさりしたものを好むようになります。さらに生活環境の変化や精神的な要因などが重なり、低栄養になりやすいことがわかっています。平成29年国民健康・栄養調査によると、65歳以上の低栄養傾向の者(* BMI≦20 kg/m2)の割合は男性12.5%、女性19.6%であり、女性の高齢者は特に低栄養に気をつける必要があるでしょう。
*国民の健康増進の目標を示した「健康日本21」では、痩せあるいは低栄養状態(BMI 18.4以下)にある高齢者ではなく、低栄養傾向にある高齢者の割合を減少させることを重視しているため、低栄養の基準をBMI 20以下としている。
高齢者の食事の特徴
高齢者夫婦の世帯や独居世帯では、買い物が面倒になる、毎食の食事を作るのが億劫になる、食事への興味が薄れる、食事回数が減ることが知られています。食事が単調になり、お茶漬けやインスタントラーメンなど簡素な食事に偏ってしまうこともあります。また、肥満やコレステロールが気になって動物性タンパク質(肉類、卵、乳製品)を極力控える傾向があり、控えすぎによる低栄養も見逃せません。
低栄養が健康に及ぼす影響
高齢者の低栄養は急激に起こるのではなく、徐々に進行します。筋肉や骨量の減少につながることで転倒しやすく骨折の危険性が高まり、最悪の場合、寝たきりになる可能性が出てきます。また、血液中のたんぱく質が減ると体の免疫力が低下し、認知機能の低下なども見られるようにもなります。
以下のような体の変化があれば低栄養が疑われるので、医療機関に相談しましょう。
・体重減少
・筋肉量や筋力の低下
・元気がない
・風邪など感染症にかかりやすく、治りにくい
・傷や褥瘡(じょくそう/床ずれ)が治りにくい
・下半身や腹部がむくみやすい
高齢者の低栄養対策
低栄養の予防対策はあるのでしょうか。普段からお風呂上りなどに体重を測り、自分の体重の変化がないかどうか、知っておくことが重要でしょう。また、食事の満足度を高めるために、食事を一緒にする人がいること、本人や配偶者が調理を行うことが重要かもしれません。低栄養予防のカギは、まめに食べて動くことです。バランスのとれた食事内容(主食、主菜、副菜)を心がけ、偏った食事にならないように気をつけましょう。また、噛み合わせの不具合があったり、入れ歯が不安定であったりすれば、歯科医に相談しましょう。しっかり「噛める」状態にしておくと、気持ちよく食べることにつながります。
低栄養の予防には多方面からアプローチが必要ですね。身体機能を維持し、生活機能の自立を保つことにより、健康寿命を延ばします。低栄養対策を実践してみましょう。