コラム

運動処方箋~運動の種類

2018年1月17日
提供元:
NPO法人EBH推進協議会
株式会社ライフケアパートナーズ
運動処方箋~運動の種類
医師が数多くの薬剤の中から、患者さんの病態や症状や、病気の進行度などに合わせて最も適した薬を処方するように、運動指導者らが携わり、たとえば健康的に肥満を解消していくための運動処方もまた、生理学的根拠に基づいて運動の種類、運動強度(運動負荷)、運動頻度、運動持続時間を決めていく必要があります。
まずは、「運動の種類」から。
大きな筋肉(大筋群)の運動、たとえば歩行、速歩、ジョギングなどの持久的トレーニングと比べると、腹筋運動、腕立て伏せ、ダンベル体操などの小さな筋肉(小筋群)に強く負荷をかける筋力トレーニングは、心臓により大きな負担をかけることになります。
心臓への負担度は、収縮期血圧(最高血圧)と心拍数の積で算出されますが、小さな筋肉を酷使する運動は、血管収縮反射が起こり、血圧も心拍数も高くなるので、「運動素人」には危険を伴います。
また、小筋群の運動は、血流が途絶えやすく、疲労物質である乳酸がたまりやすいので、運動を長く続けることが難しくなります。
一方、持久的トレーニングでは、酸素を取り入れて、筋肉に輸送したり、脂肪を分解、利用する能力が圧倒的に良くなるので、減量を目標に据えた場合には「有酸素運動」が最もお勧めです。
有酸素運動は、大筋群のリズミカルな収縮を取り入れた運動であり、運動量が大きくなるだけでなく、筋肉のポンプ作用で血液が循環しやすくなるので、心臓への負担が軽くて済むのも特徴です。
一般に推奨されるのが、歩行、ジョギング、水泳、自転車エルゴメーター、水中歩行などです。
ただ、水泳や水中歩行は浮力で体重が軽減されることになりますので、思ったよりも運動量は少なく、また水泳技術がない人にとっては、浮力に抵抗した無駄な動きが多くなり、かえって心拍数が高くなって心臓に大きな負担をかけることにもなりますから、注意が必要です。
一方、歩行運動は、呼吸器・循環器系の体力指標である「最大酸素摂取量」や「無酸素性作業閾値(むさんそせいさぎょういきち/血中乳酸が増加しはじめる運動強度)」を増加させることも報告されており、成人の初期トレーニングや運動処方には最適です。