健康診断の検査結果で、アルコールを飲まないのに肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP)が異常値を示している場合があります。中には、人間ドックなどの腹部超音波検査で「あなたは脂肪肝です」と指摘された人もいるかもしれません。脂肪肝とは、肝臓に脂肪が異常に蓄積した状態です。脂肪肝の原因として、アルコール以外に、過栄養があります。後者を「非アルコール性脂肪肝」と言います。以前は、「脂肪肝は良性なので放っておいてもよい」と言われていたのですが、最近の研究では、この非アルコール性脂肪肝の自然経過をみると、5~15年の間に脂肪肝の0~40%が脂肪性肝炎に進展し、脂肪性肝炎の5~20%が肝硬変となり、肝硬変の0~15%に肝がんの発症がみられるそうです。さらに、非アルコール性脂肪肝の人は糖尿病にもなりやすいことがわかっています。どうも「脂肪肝は良性なので…」というのは俗説だったようです。
日本国内の1,000万人以上が非アルコール性の脂肪肝、100万人以上が脂肪肝炎に罹患しているのではないかと推定されています。驚くべき数字ですね。それでは、非アルコール性脂肪肝の治療はどうしたらいいのでしょうか。
残念ながら、現在のところ、非アルコール性脂肪肝に特化した薬物療法はありません。アルコールによる脂肪肝は断酒することにより、2~4週間で肝障がいの数値の改善に効果が期待されます。一方、非アルコール性脂肪肝の治療は減量と運動になります。運動は有酸素運動でも筋トレでも良いのですが、軽く汗をかく程度の早歩きなど中強度以上の運動が肝障がいの数値の改善に効果的とされています。食事では、炭水化物を少し控えて、魚介類を積極的にとることで改善が期待できます。
ちなみに、肥満や糖尿病による非アルコール性脂肪肝では、AST値よりALT値の方が大きい傾向があります。皆さんも、ご自分の肝機能検査をじっくり眺めてチェックしてみてはいかがでしょう。