米国では、一般内科医、専門医を問わず、骨粗しょう症に対する処方頻度が最も高いのは運動療法(65%)とカルシウム補充療法(63%)です。
例えば、骨密度の低い白人女性に対しては、ほぼ6割の医師が運動を処方しています。
すでに骨粗しょう症になった患者にでも、運動療法がこのような高率で処方されているのです。更年期を迎え、骨量の減少が始まっている状態や、閉経によるホルモンの乱れで骨の代謝が変わっているときでも、運動が骨の損失に対して抑制的に働くことが分かってきました。ダルスキー博士らの研究では、閉経後の女性(55~70歳)に歩行、ジョギング、階段昇りを週3回、9か月間実施し、腰椎の骨密度が5.8%も増加したことを認めています。
何もしなかった対照群では1.3%の骨の減少が生じました。
特に運動療法に平行して、ホルモン補充療法が取り入れられた場合、更年期以降においても著しい骨の増加が起こる可能性が、最近の研究で明らかになりつつあります。運動による骨粗しょう症の予防・改善効果に関する生理学的メカニズムは、①骨内部への血流量の増加、②骨を造る骨芽(こつが)細胞の活性化、③骨を溶かす破骨(はこつ)細胞の抑制、④荷重など物理的な刺激によって生じた微量の電流発生による骨塩(こつえん:骨の中のミネラル分)沈着の促進、などが関与していると考えられています。
ダンベルなどを用いた運動強度が高いウエイト・トレーニングのほうが、骨へより強い刺激を与えることができますが、これを長時間続けることは体力面からも難しくなります。
さらに、過度の血圧上昇や交感神経活動の刺激を伴う可能性の強いウエイト・トレーニングは、更年期・老年期の人びとにとって決して好ましいものではありません。NASA米国航空宇宙局の研究者は、骨粗しょう症の予防効果を得るためには、1日3時間程度は重力に逆らった姿勢を維持する必要があると指摘しています。
ゴロ寝でテレビを見るのは、太るだけでなく骨粗しょう症の原因にもなるのです。
骨粗しょう症の予防のために今から歩行やジョギングなど取り組んでみませんか。