コラム

運動による予防・改善効果~がん

2019年6月19日
提供元:
NPO法人EBH推進協議会
株式会社ライフケアパートナーズ

 

欧米食に舌鼓を打ちながら、やや飽食ぎみの人々が目立ってきた日本では、大腸がんが多くなってきています。
がんに関しても生活習慣が重要な因子になっています。
英国のドール博士らの一連の疫学研究によれば、「がん発生の約35%は食生活により、約30%はタバコによる」という調査結果が得られています。
実に、がんの6割以上の原因が口から入るということになります。
ということは、食生活の危険因子(アンバランスな栄養、変化のない食生活、過食、脂肪・食塩過多、ビタミン・食物繊維不足など)を取り除き、さらに禁煙すれば、がんの60%は予防できる可能性が強いことになるわけです。
これは、ビタミンA、C、Eには発がん物質の生産を妨げる働きがあることや、野菜に含まれる繊維質が、腸内の発がん物質を薄め、体外に排泄する作用を持っているからです。
また、過食や脂肪過多は大腸がんや乳がん、前立腺がんの原因の一つになっており、食塩過多や刺激の強い嗜好品は胃がんを誘発するので注意が必要です。さて、運動によっても、がんが予防できる可能性があります。
それは、運動によって免疫機能の向上など、予防医学的効果がもたらされるからです。
有名なアメリカのフラミングハムの調査でも、110万人を対象にしたスウェーデンの研究でも、また、厚生労働省研究班がまとめた日本のJPHC研究(国立がんセンター・津金昌一郎ら)においても、日常の身体活動量とがんの発生率の関係に注目しています。
大腸がん、特に結腸がんの発生率は、身体活動量の多い人ほど低いことが報告されています。
また、女性のがんの発生率についての調査では、大学時代にスポーツ競技者であった女性とそうでなかった女性とのがんの発生率は、スポーツを行っていた女性のほうが明らかに低いという結果が出ています。
統計学的な相対リスクは、乳がんで1.9倍、生殖器がんで2.5倍の差に達しました。
この結果は、年齢、家族歴、初潮期、妊娠回数、避妊薬使用歴、女性ホルモン使用歴、喫煙習慣、肥満などの条件から統計学的に補正しても変わりませんでした。
以上のことから、少なくとも疫学的にみる限り、身体活動量ががんの発生に対して予防的に作用することが分かります。

がんの発生率は年齢とともに高くなりますが、その一因として免疫機能が高齢になるほど低下することと関係していると言われています。
最近の医科学研究では、運動に免疫機能を高める作用、特にがん免疫をつかさどるNK細胞の活性化作用があることが分かってきました。
また、運動中に分泌される体内麻 薬様物質のβエンドルフィンが、免疫をつかさどるT細胞を増やしたり、NK細胞の機能を高める作用を持っていることも知られるようになっています。