エネルギー消費バランスをマイナスにするには、食事制限してエネルギーの入力を減らすか、運動でエネルギーの出力を増加させれば良いことになります。
しかし、最近の研究で、肥満者では、主観的に自分の運動量を過大評価し、食事摂取量を過小評価することが、科学的に分かってきました。
運動によるエネルギー消費量は、決して大きいものではありません。
しかし、運動を併用しないで食事制限のみを行った場合、肝臓や筋肉のグリコーゲンが減少して、やがて水分やカラダの構成成分に破綻が生じてしまいます。
つまり、脂肪自体はあまり減らずに、カラダの構成成分である除脂肪体重(骨、筋肉組織)が大幅に減少するので、カラダに占める脂肪の割合(体脂肪率)が逆に増大する結果を招く可能性が高くなります。
逆に、食事制限をせずに、運動でエネルギー消費を増加させた場合、骨や筋肉組織を減らさずに、脂肪だけを燃焼させることが可能になります。
言い換えれば、「運動ダイエット」では、大切な筋肉や骨などのカラダの構成成分を減らさずに、脂肪だけを確実に減らすことができるのです。
さらに朗報。
一般的に、運動しているときだけ、エネルギー代謝が高まって脂肪が燃えると考えられています。
しかし、この考え方は、間違っています。実際、運動をした場合、そのときだけでなく、運動後にも安静時の代謝が高いレベルに保たれるのです。
南カリフォルニア大学のデブリーズ博士の実験では、運動後の基礎代謝が同じ時間帯の運動をしなかった日と比べて、個人差はありますが、7.5~28%も高い状態が4~6時間続くことが証明されています。
運動ダイエットは、筋肉で運動中に脂肪を燃やしてくれるだけでなく、運動が終わった後もしばらくは筋肉のエネルギー代謝などが増加しているのです。
この「おまけ」のカロリー消費だけでも、1年間で約2キログラムもの脂肪を燃やすことができるのです。肥満に対する運動の効果は、生理学的にいくつも認められています。
① エネルギー消費の増大と脂肪組織消費による減量
② 脂肪合成の抑制
③ 基礎代謝の増加
④ インスリン感受性の向上
⑤ 動脈硬化性の血管障がいの改善
(善玉コレステロールの増加、中性脂肪の低下、血圧降下作用など)
⑥ 呼吸循環機能の増強と運動能力の向上
⑦ ストレスの解消
などです。このように、運動の継続は食事制限ではできない減量効果、つまり、太りにくい体内代謝や体質をつくることができるわけです。
各種の合併症を発症しやすい内臓脂肪型の肥満では、運動することによって内臓脂肪が皮下脂肪よりもっと効果的に燃焼されることも指摘されています。
さらに、運動の継続は、生活習慣病の予防医学的効果も備えているので、肥満のコントロールには運動が絶対不可欠なのです。