「確かに運動をすればメタボが解消されることは理解した。しかし、三日坊主の自分が定期的な運動習慣を持てるかどうかは、まったく別問題だ。不可能だ。」
そんな人に、とっておきの方法があります。
それは、「ニート」。
英語でいうと「NEAT(Non Exercise Activity Thermogenesis)」直訳すると「非運動性熱産生」です。2007年、世界で一番読まれている糖尿病の専門誌『Diabetes』にアメリカの糖尿病専門医のハミルトンが「糖尿病を予防するニートの効用」に関する論文を発表しました。
これは、「『ニート』を増やせば、何も特別な運動習慣を持たなくとも、糖尿病やメタボは防げる」という衝撃的な内容でした。
「ニート」とは、簡単にいうと、運動とまでは言えない日常の活動で消費されるエネルギーのことです。
人は、朝起きてから、夜寝るまで、ずっと動き続けています。
布団から起き上がる。トイレに行く。座って、食べて、立って、出かける。バスや電車に乗って、階段を上がる。
会社についても、誰かと話したり、打ち合わせに出かけたり、何かあるたびに座って立って、歩きまわる。
本人がそれを運動だと意識しなくとも、実にさまざまな活動をしています。
「30分のジョギング」というようなはっきりとした運動ではないかもしれませんが、確かにエネルギーを消費し続けているのです。
これを「ニート」といいます。
実は、このニートの多い少ないが、メタボや糖尿病に大きく影響しています。
糖尿病の患者は820万人もいると言われています(平成18年 国民健康・栄養調査結果)。
記録の残っている昭和30年の30倍、終戦直後からすれば50倍にも上るでしょう。
なぜこんなに急に増えたのかを考えるとき、まず頭に浮かぶのは「飽食」という言葉でしょう。
しかし、驚くことに、2004年の日本人ひとり1日あたりのエネルギー摂取量は1902キロカロリーと、終戦直後(1945年)の1903キロカロリーとほぼ同じ水準です。
1975年ごろの2226キロカロリーから減り続けているにもかかわらず、肥満者は増え続け、糖尿病患者が激増しているのです。
考えられる理由は、ただ一つ。
みんな動かなくなったのです。
すべてが便利になったので、あまり体を動かさなくなった。
だから、お腹があまり減らないので食べる量も相対的に減ってきているのですが、それ以上に動かないのです。
摂取するエネルギーが同じなのに太るということは、消費する量が減ったからに違いありません。
まさに、ニートが不足してきているのです。
戦後の何もない時代、どこへ行くにも自分の足で動かなければならない状態でした。
また便利な家電製品などない時代には、人は運動などしなくともニートだけで筋肉の活動は十分だったでしょう。
それが高度成長期を経て、誰もがクルマを乗り回せる時代となると、人々は歩かなくなり、エアコンで快適になった家でこもり始めました。
ニートは必然的に減少し、それと呼応して、メタボや糖尿病が急激に増えてきたのです。